ニュースアプリ「SmartNews」を開発・運営するスマートニュースのオウンドメディア「スマQ(スマキュー)」がオープンしました。スマートニュースがどんな会社か、どんな人がどんなふうに働いているのかを皆さんに「見つけてもらえるメディア」を目指します。
オープン記念として、スマートニュースで働く2人のエンジニア、Engineering Manager の「amachang」こと天野仁史 (@amachang) と、Senior Software Engineer の「グニャラくん」こと末永匡 (@tasukuchan) に、エンジニアのキャリアから会社としてのスマートニュースについてまで語ってもらいました。聞き手は JP Media Business Development Manager / スマQ共同編集長の岑康貴 (@minesweeper96) です。
あまちゃん (@amachang) | Twitter
グニャラくん ◆ 末永匡 (@tasukuchan) | Twitter
2人とも、起業を経てスマートニュースへ
―― 本日はよろしくお願いします。まずは自己紹介を兼ねて、スマートニュースにたどり着くまでの流れをそれぞれ簡単に教えてください。
amachang 天野です。インターネット上ではamachang(あまちゃん)と呼ばれています。高専を出て、21歳で通信機メーカーに入ってキャリアをスタートしました。そのあと、mixiで知り合った人に誘われてWebエンジニアになりました。そのころ、Webエンジニアってまだ、html、Perl、JavaScriptが書ければちゃんとできる人、という時代だったんですよね。当時、自分も勢いだけはあったので、徹夜してコードを書いて、友達もいっぱいできて、Webエンジニア楽しいよね!っていうブログを書いてたんです。
amachang このころ、勉強会でグニャラさんにお会いしてるんですよ。当時から低レイヤーのことも分かってるし、すごかった。負荷分散とかまだWebエンジニア界隈でもそこまでみんな詳しくない時代に、よく知っていたすごい人、という印象です。
グニャラくん たしかに、そのころにお会いしてますよね。
amachang その後、サイボウズ・ラボに転職しました。素晴らしいエンジニアが多くて、それに比べて自分は何もできないな……と思って基礎から勉強して。でも自信を無くしてしまって、エンジニアとして一番を目指すのは難しいなと感じてしまったんですよね。それで、ビジネスや企画もやる、ゼネラリストになろうと思ったんです。このころに、鈴木健さん(スマートニュース株式会社 代表取締役会長 共同CEO)と会っています。
最終的に、友達だった水波と一緒に「カクテル」という会社を起業して。実はもうひとりの友達と3人で起業したんですが、1年くらいで彼が亡くなってしまって、残された水波と一緒にサービスを5〜6個立ち上げて頑張っていました。それで健さんに資金調達の相談をしに行ったら、そのままスマートニュースに参画することになった、という流れです。
画像投稿SNSサービス『Pictory(ピクトリー)』運営のカクテル株式会社メンバーがスマートニュース株式会社に参画 | スマートニュース株式会社
6 年間の起業を終えて - IT戦記
―― 続いてグニャラくん。
グニャラくん 僕は……自分のLinkedInを見ながらしゃべりますね(笑)
―― どうぞ、カンペを見てください(笑)
グニャラくん 学生のころは、大学院の博士課程と、簿記の専門学校のダブルスクールをしてて、どっちも中途半端になっていた(笑)。で、アルバイトをしていた会社にそのまま入社してエンジニアになったあと、未来検索ブラジルという会社に転職して、2ちゃんねるの検索エンジンとして使っていたSennaや、ニコニコ大百科などの開発をしていました。
Senna 組み込み型全文検索エンジン - Senna 組み込み型全文検索エンジン
ニコニコ大百科 - あらゆる言葉を解説する辞典・辞書サイト
―― 当時、僕は@ITというWebメディアの編集記者をしていて、グニャラくんにインタビューしているんですよね。もう10年以上も前……。
グニャラくん 懐かしい!
末永匡――Sennaとニコニコ大百科を作る偽プログラマ − @IT自分戦略研究所
グニャラくん 勉強会にもよく行ってて、Yappoさんに誘われて発表したり。そのころはまだ勉強会ってそんなにポピュラーじゃなくて、参加する人が少なくて、その分、尖った人が多かった。今の自分につながっている部分が多いです。
それから、海外で働いてみたいという野望をもってディー・エヌ・エーに転職しました。数年して実際に海外赴任になって、仕事を楽しんでいたんですけど、同僚だった紀平拓男 (@tkihira) が起業する、海外だ、と言っているのを聞いて、これは面白そうだと。ということで、一緒にサンフランシスコで「Tombo」という会社を起業しました。
Tomboでは、iOSアプリをWebアプリ変換する技術を開発していました。そんな中、スマートニュースのサンフランシスコオフィスができて、お披露目会に遊びにいったり、オフィスで浜本階生さん(スマートニュース株式会社 代表取締役社長 共同CEO)と一緒にアメリカ大統領選の開票速報を見たり……と、交流があったんです。その後も僕と紀平が階生さんと話をしていく中で、最終的にスマートニュースに参画を決めました。
スマートニュース、優れたHTML5技術を持つ『Tombo, Inc.』を買収 | スマートニュース株式会社
Tombo, Inc. をスマートニュース株式会社に売却しました
はてなダイアリー、TopHatenar、勉強会。2人を育んだ歴史
―― 2人ともネット上や勉強会などで活発に活動されるエンジニアとして著名だったところから、それぞれ起業されて、スマートニュースに参画……という、近しい足跡を持たれています。そして今、気付いたのですが、スマートニュースの2人の共同CEOのうち、amachangは健さん、グニャラくんは階生さんと出会ってここにたどり着いてるんですね。
amachang でも僕は階生さんの作ったTopHatenarに育てられたところもあるんですよ。はてなダイアリーでブログをずっと書いていたので。
グニャラくん 分かる。当時ブログを書いてた人は、TopHatenarには影響を受けていますよね。あのサービスは、情報をクロールして整理して伝えるというものだから、今のSmartNewsに繋がっているんじゃないかなと僕は思います。同じく階生さんが作ったBlogopolisも印象に残っていますね。実装されているVoronoi Treemapsというアルゴリズムが当時、僕と階生さんくらいしか使っていなかったもので、その話で盛り上がったりしていました。僕はニコニコ動画のタグの可視化に使っていたんです。
ビジュアルブログ検索エンジン『Blogopolis』を公開しました - kaisehのブログ
Blogopolisの裏側 Flex Edition
グニャラくん ちなみに、僕と階生さんは大学の先輩後輩なんですよ。
amachang どっちが先輩なんですか?
グニャラくん 僕が先輩。
―― 2人はかなり前から勉強会で会っていたとのことですが、当時の印象などは覚えていますか?
amachang ニアミスが多かった気がしますね。
グニャラくん 一度、赤坂のビルか何かで開催された勉強会だったかな……話しかけたら「あれー誰でしたっけ、グニャラさん?」みたいな、うろ覚えな反応をされたことが(笑)
amachang そんな! 僕はお会いしたときに紹介されて、Sennaの人なんだ、ってびっくりした記憶があります。僕、知らないこと、分からないことがあると、周りのエンジニアに素直に聞きに行っちゃうんですけどグニャラくんはそのころから、いろいろ丁寧に教えてくれたんです。どんな人にでも同じように親身に接する人、っていう印象があるんですよ。信念を感じるところがあるんですけど、意識されていますか?
グニャラくん うん、それはあるかもしれないです。
amachang 人の悪口とか言わないですよね。見たことがない。
グニャラくん 人の悪口を言っていると、自分自身がつらくなってくるから。自分のためです。
マネージャ? スペシャリスト? ゼネラリスト?
―― 2人が今、スマートニュースでどんな仕事をしているのか教えてください。
amachang 僕はエンジニアリングマネージャ(EM)です。組織を成長させる仕事。スマートニュースは今すごく成長していて、その成長の角度が急なんですけど、入社してすぐ「エンジニアの採用が追いついてない!」と思ったんです。なので、そこにコミットしています。あと、組織が拡大すると新たなプロセスや仕組み、ルールが必要になってくるので、どうやってスケールする開発組織を作るか、という課題に取り組んでいます。
グニャラくん amachang、直接的な開発のことだけじゃなくて、例えば経費精算の仕方をマニュアル化してQiita:Team(筆者注:スマートニュースでは社内情報共有ツールとしてQiita:Teamを使用している)に書いてるじゃないですか。あれがすごく印象的なんですよね。一回学んだことを文章に残しているの、amachangらしいなーって。
amachang そこにはこだわりがあって。3人で起業したあとひとり亡くなってしまったという話をしましたよね。その後、あまりにも知らないことだらけだということに気付いたんですよ。定款って何!?登記って何!?って。だから、いつ自分が死んでもいいようにしておかないと、と思ったんです。ボタン一発で終わらない作業は、どんなものでも手順書にするようにしている。僕がいつEMをやめても、すぐ次の人ができるように、定期的に行うことは手順書にしています。
グニャラくん 僕は ML (Machine Learning) Foundation というところに所属していて、サーバからニュースを持ってきてSmartNewsの「あなたにおすすめ」に出していくところのモジュールなどを担当しています。
―― なんとなく、amachangがマネージャやゼネラリスト、グニャラくんがエンジニアやスペシャリスト、という印象ですが……。
グニャラくん でも実は、僕もゼネラリスト志向なんですよ。
amachang もともと検索エンジンの開発もすれば、ニコニコ大百科では企画的なこともされてましたもんね。
―― じゃあ場合によってはEMも?
グニャラくん 足りなければやりますよ!
―― すごい。
amachang 逆に僕は、EMは実はそんなに(笑)。テックリードとか、開発のプロセスを高速に回すのが好きなんですよ。
グニャラくん 肩書きは道具なので、肩書きがあるとうまく回るところもあるし、利用した方がいいですよ。
amachang エンジニアとしてのキャリアを考えたときに、悩むところもあるんですよ。例えばJavaScriptのスペシャリストとしてやっていこうと思ったとして、でもJavaScriptという技術領域そのものが無くなる未来もあるんじゃないか、と。特定の技術領域に全振りするのは怖いなと感じるんです。この会社は技術トランスファーが可能そう、自分で手を上げればEMもプロダクトマネージャにも挑戦できそうだな、と思っていて、そこはすごく良いですね。
グニャラくん そういえば、amachangにAndroid書かない?って言われたことあります、僕(笑)
amachang グニャラさんは不安、ありませんか? Webエンジニアは昔はサーバからフロントまで全部やらないといけないという印象があったけど、今はそれぞれのスペシャリストに分化していっているように感じるんです。
グニャラくん なんでも時間をかければかけるほどスペシャリストになっていきますよね。逆に言えば、時間さえかければなんでもキャッチアップできる、という実感があります。
amachang おおー。
グニャラくん amachangも、そういう実感ありません?
amachang なくはないんですけど、一流のエンジニアには勝てないなって。
グニャラくん ああ、かけている時間が違うから。
amachang 僕はクライアントサイドを得意としてきました。JavaScriptやiOS。つまり、プラットフォーム依存なんですよ。だから不安がある。技術トランスファー可能な組織にしていきたいなと思っています。
グニャラくん 僕個人としては、自分で小さなサービスを作るなら全部できないといけないので、AWSやGCPも含めて一通りやっておきたいなと思っています。
久しぶりに大勢の人が集まるオフィスで働いて
―― 2人とも、少人数での起業から、100人以上の会社に環境が変わったわけですが、そのあたりはいかがですか?
amachang めっちゃ楽しい! 仕事していると感謝されるし。働いて感謝されるのが自然なのが良いですよね。起業していると、やって当たり前、活躍するのが当たり前なので……(笑)
グニャラくん 労務や法務も全部、自分たちでやらないといけないですし。
amachang 僕、オフィスに来て、他のメンバーとすれ違うと必ず「おつかれさまです」って挨拶するようにしているんですよ。人と話せるというのは素晴らしい!
―― 人に飢えている……。
グニャラくん 多様性があって面白いですよね。エンジニア以外の職種の方も多いし、Slackを見ていても、他の職種ではこういうことを話して、こういう仕事をしているんだ、っていうのが楽しい。
amachang 一方で、エンジニアを大事にしている会社という部分もありますね。エンジニアがリスペクトされてるなって感じるし、エンジニアがビジネスを作っているところもある。あと、肩で風きって歩いてる人がいないのが好き。非常にフラット。
グニャラくん 上下関係が少ないですよね。
amachang この雰囲気は保っていきたい!
グニャラくん EMも、階層じゃなくて役割。マネジメント係っていうラベルがついている感じ。
amachang そうそう。僕は自分をサーバントだと思ってるし。
グニャラくん あとは、ホワイトなのがいい。スタートアップでこの成長角度なのに、比較的ホワイト。節制しながらちゃんと成長しているのが良いですね。
amachang でも締め切りはみんな守る。リリースが遅れない。かといってギリギリまで残ってやってることもない。
グニャラくん ネガティブな面も言うと、朝、起きないといけないのが辛い(笑)。起業時代は好きな時間に働いていたから……。でも、いろんな人と顔を合わせて働くメリットもありますからね。
グローバルで「One Product, One Team」、グローバルな開発体制
―― スマートニュースはサンフランシスコとニューヨークにもオフィスがあって、日本とアメリカでひとつのプロダクトを一緒に開発している体制です。
グニャラくん 日本発で、グローバルで「One Product, One Team」って、珍しいし特徴的。その特徴に開発体制がくっついている、という理解をしています。
amachang Tombo時代も日米で分かれて開発ですよね。
グニャラくん そうです。日本にいる者がいて、僕はサンフランシスコにいて、という感じで……好きな時間に働いていました(笑)。もう、全部リモートみたいな意識でやっていましたね。
―― 時差もあるわけじゃないですか。僕もこの会社に入って、言語や距離の壁もありますけど、一番重いのが時差の壁だなって感じるんですよ。
グニャラくん うん、時差も織り込み済み。そもそも今のスマートニュースでは、東京オフィスでアメリカ市場向けの開発をしてる人もいるわけです。意図的に、地理的な場所を意識しないような体制になっていますよね。とにかく非同期コミュニケーションで進めていくしかない。
amachang 去年から、Product部門のSVPとして、サンフランシスコオフィスにJeannie Yangが入ったんですけど、Jeannieは本当にすごい。こんなにうまくいく?って。彼女が入って、言語の壁を超えて、組織を変えていった。日本の文化と、シリコンバレーの一流の組織づくりが合致したんです。
スマートニュース、シニア・ヴァイス・プレジデント プロダクト担当(Senior Vice President of Product)に、Jeannie Yang氏が就任 | スマートニュース株式会社
amachang 最初はうまくいかなかった部分もありましたけど、今期はその失敗を生かしてうまく回っている。スマートニュースにはコアバリューのひとつとして "Have Appreciation" という考え方があって、それをもとにうまく開発が回っている。リーダーが変わると縄張り争いとかも起きがちだけど、そういうことがなくて良いなって。
スマートニュース、エンジニア大募集中です
―― さて、そんなスマートニュースはエンジニアを大募集中なわけですが、一緒に働いてみたいエンジニアのイメージはありますか?
amachang 技術レベルはもちろんしっかり見ますけど……そうだな、スペシャリストタイプの人が力を発揮しやすいかもしれない。
グニャラくん 人が増えてきたから、ちょうどスペシャリストが活躍するフェーズですね。もう少し人数が少ないとゼネラリストが活躍するんだけど、スペシャリストタイプにとってちょうどいい時期だと思う。EMも必要なんですけど、マネジメントのスペシャリストということで。あとは、サービス開発が好きな人がいい。特に、ニュースアプリ自体が好きな人がいいな。
amachang 日本のニュースアプリの発展ももちろんあるんだけど、アメリカでのフェイクニュース問題に挑戦するとか、アメリカのニュース市場をどうしていきたいか、という部分が、直接的に世の中を変えていくという意味でも、面白い領域だと思う。
グニャラくん サーバサイドの人もニュースアプリという部分を意識している人が多いですね。みんなSmartNewsというひとつのアプリに関わる仕事なので、意識せざるを得ない。
―― 僕もこの「スマQ」で、スマートニュースで働く人やカルチャー、考えていることなどを伝えていければなと思います。
amachang 英語でコミュニケーションするシーンも多くて、チャレンジングですけど、やりがいも多いですよ。
グニャラくん 僕、スマートニュースが積極採用してるって、入社するまで知らなかったんです(笑)
amachang もっとアピールしていかないと!